【和歌山日帰りドライブ】高所恐怖症夫婦が巡る絶景旅|あらぎ島・生石高原・和歌山マリーナシティ

ゆる旅プラン

あらぎ島展望台|妻の高所恐怖症が発覚した朝

妻は憂鬱そうな顔でベンチに座っていた。

大阪市内から車で約2時間。
和歌山の山間部にある「あらぎ島展望台」に、私たちは朝早くからやってきた。

SNSでも人気の棚田の絶景スポットだ。

私は先に妻を展望台へ降ろし、そのまま専用駐車場へ車を停めに向かった。

ところが戻ってみると、妻はベンチに座ったまま浮かない表情をしている。

「どないしたん?」

私が不思議そうに聞くと、妻は一言。

「高い。」

どうやら高所恐怖症らしい。

この時、私は初めて妻が高所恐怖症であることを知ったのである。

観覧車が苦手な夫。
展望台が苦手な妻。

お互い高い場所が苦手なのに、その種類だけは見事に違う。

なんとも好き嫌いの激しい高所恐怖症夫婦である。
しかし、展望台から見える景色は見事だった。

まるで精巧に作られた棚田のジオラマを見下ろしているようだ。

水が張られた棚田には空の色が映り込み、その脇を透明な清流がさらさらと流れている。
空には不機嫌そうな雲が広がっていたが、ときおり薄日が差し込み、風景に柔らかな光を落としていた。
遠くに見える橋は、まるでピンセットでつままなければ落ちてしまいそうなほど繊細に見える。

私は夢中でシャッターを切った。
童心に帰ったような気分だった。

とはいえ、隣にはテンションの上がらない妻がいる。
長居は無用だろう。

「駐車場のところに良さそうなカフェがあったから、休憩していくか?」

そう提案し、展望台を後にした。

あらぎ島展望台の専用駐車場は、展望台から坂を5分ほど下った場所にある。
その駐車場の出入り口にあるのが「kado」だ。

定休日は月曜日と水曜日。
今回は日曜日だったため運よく営業していた。

もし翌日に来ていたら月曜日。
妻の機嫌はさらに悪化していたかもしれない。

こちらの名物は山椒を使ったメニュー。
ソフトクリームには粉山椒が振りかけられ、サイダーには蜂蜜漬けの山椒が入っている。

ソフトクリームは爽やかな香りが広がり、最後まで飽きずに楽しめる。
一方で山椒特有のピリッとした刺激が少し苦手な方には、サイダーがおすすめだ。

山椒の香りは感じるもののクセは強くなく、とても飲みやすい。

どちらも美味しくいただくことができた。

十分に休憩したところで、次の目的地へ向かう。

次なる絶叫スポットは、道中で見つけた吊り橋。
蔵王橋である。

蔵王橋|高所恐怖症夫婦、再び試される

蔵王橋にやってきた。

あらぎ島展望台から車で10分ほど。
山道を下った先にある吊り橋だ。

道中では何度か後続の車やバイクに道を譲った。

すると皆さん、きちんと手を挙げたり会釈をしたりしてお礼をしてくれる。

山は人の心を穏やかにするのだろうか。

少なくとも、大阪市内でたまに遭遇するような、何かあればすぐクラクションが飛んでくる殺伐とした空気はここにはない。

どこか安心感のある道中だった。

しかし、その安心感はすぐに恐怖心へと変わる。

蔵王橋。

少し広くなった路肩の先に、赤い吊り橋が谷をまたぐように架かっていた。

「私、車の中にいる。」

橋を見るなり、妻は早々に引きこもり宣言をした。

こうして今回も、私一人で撮影に向かうことになった。

最初は橋の外観だけ撮ろうと思っていた。

だが、それでは視聴者の皆さんに橋の迫力は伝わらない。

ここは覚悟を決めるしかない。

私は意を決して橋へ足を踏み入れた。

胸がキューッと締め付けられる。

心拍数が上がる。

そして、目の前を歩くカメラマンらしき人の歩幅に合わせて、橋が上下に揺れ始めた。

縦揺れである。

その瞬間、なぜか頭に浮かんだのは阪神・淡路大震災だった。

「縦揺れしたの、あの時以来だな……」

自分で自分の恐怖心を煽るようなことを考えてしまう。

橋の3分の1ほどまで来ただろうか。

ふと頭の中で声がした。

「よくやった。もう帰っていいぞ。」

誰の声かは分からない。

だが、非常に説得力があった。

足元を見て少し眩暈がした私は、その声に従うことにした。

正気を保ちながら、揺れる橋を慎重に引き返す。

気づけば息を止めていた。

交感神経は完全に戦闘モードである。

それでも何とか撮影には成功した。

滞在時間はほんの数分。

だが、貴重な映像を撮ることができた。

満足して車へ戻る。

妻はというと、特に心配する様子もなくSNSを眺めていた。

やれやれ。

こうして高所恐怖症夫婦は次の目的地へ向かう。

次なる舞台は、生石(おいし)高原である。

生石高原|360度世界が変わる絶景と、次なる恐怖

生石高原。

初見では誰もが「なまいし高原」と読んでしまう高原である。
正しくは「おいし高原」だ。

蔵王橋から車で約15分。

道中は山道を登ったり下ったりの繰り返しで、いかにも“出そう”なトンネルを2つもくぐった。
さて、今度はどんな恐怖が待っているのだろうか。

そんなことを考えながら駐車場へ向かう。
すると看板が目に入った。

「熊の出没情報があります」

今度は熊らしい。
鈴も持っていない私たちにとっては、どうしようもない情報である。

出会わないことを祈るしかない。

幽霊に熊に、高い場所。

人間社会は恐怖に満ちている。
そんなことを考えながら歩いていくと、目の前には広大な草原が広がっていた。

さすが高原である。
とにかく眺めがいい。

昔、

「360度世界が変わった!」

「いや、それ元に戻ってるやん!」

というやり取りを聞いたことがある。

だが、生石高原には本当に360度世界が変わる景色があった。
南側を見れば山々が幾重にも連なり、反対側を向けば和歌山湾や市街地が見える。

熊野古道や高野山の方向だろうか。

遠くまで見渡せる景色が続いている。
どちらを向いても違う景色。

本当に世界が変わって見える。
世界は思っているより広い。

そんな当たり前のことを改めて実感させてくれる場所だった。

さて、私たちが生石高原にやって来たのには理由がある。
SNSでよく見かける有名な崖があるからだ。

まるで岬のように突き出した崖。

写真で見ると足元が切り立っているように見えるが、実際はしっかりと地面があり、安全に撮影できる。
さらに横から撮影できる場所もあり、そこから撮ると崖の上で黄昏れているような写真が撮れるのだ。

あいにくの曇り空だったが、カメラを回す。

晴れていたら、きっとSNSの「いいね」がたくさん集まりそうな絶景スポットである。

しかも日曜日の昼前だというのに、人はそれほど多くない。
撮影もしやすかった。

熊には注意して、ぜひ訪れてほしい。
もっとも、どう注意すればいいのかは私にも分からないのだが。

ふと崖の近くを見ると、老夫婦がお弁当を広げていた。
時刻は11時半を過ぎた頃。

私たちもそろそろお腹が空いてきた。

次の目的地は「森のパン屋さん」。
生石高原から車で10分ほどの場所にあるという。

ただし、そこへ続く道はかなり狭いらしい。
ペーパードライバーに務まるだろうか。

新たな恐怖が、私たちの前に立ちはだかった。

森のパン屋さん|本物の隠れ家は、本当に隠れていた

私たちは困惑していた。
確かにこの先に「森のパン屋さん」があるはずなのだ。

しかし、目の前に広がる道は、あまりにも“あっちの世界”へ続いていそうだった。

本能が告げる。

「行くな」と。

入口の前でしばらく立ち尽くす。

行くのか。
引き返すのか。

気づけば10分ほど悩んでいた。

すると、森の奥から一台のワゴン車が出てきた。

どうやら正解らしい。

私は意を決して車を進めた。

左は崖。
右も崖。
しかも道幅は狭い。

対向車が来れば、どちらかが泣きながらバックする未来しか見えない。
そんな緊張感の中、ゆっくりと森の中へ入っていく。

すると左手に分岐が現れた。

「森のパン屋さん」

どうやらここらしい。

だが問題があった。
駐車場へ入るにはこの急な坂をバックで下らなければならないのである。

嘘だろ。
冷や汗が滲む。
心臓はすでにバクバクである。

何度か切り返しながら慎重に下がっていく。
すると店主さんが気づいたのか、外へ出てきて誘導してくれた。

おかげで何とか駐車完了。
無事に停められた安堵感で、私は息を切らせながら挨拶とお礼をした。

店内へ入ると、スリッパを差し出される。
中は立派なログハウスだった。

世の中には「隠れ家カフェ」と呼ばれる店がたくさんある。

だが、ここは違う。
本当に隠れている。

店内にはレトロな雑貨が所狭しと並び、どこか懐かしい空気が流れている。
まるでトトロの世界に迷い込んだようだった。
店主はきっとジブリがお好きなのだろう。

そんなことを思いながらメニューを見る。

そして肝心のパンだが――

なかった。

ほとんど売り切れである。

残っていたのは、

・クリームパン
・あんぱん
・レーズンフランス

くらいだった。

ランチタイムに来たのだから仕方がない。
私たちはクリームパンとレーズンフランス、それにピザと海の幸のトマトパスタ、そして南高梅スカッシュを注文した。

料理を待つ間にパンをいただく。

まずはクリームパン。
卵の風味が豊かで、ほんのり香るバニラが優しい。
どこか懐かしさを感じる味だった。

続いてレーズンフランス。
固すぎず柔らかすぎず、子どもからお年寄りまで食べやすそうな仕上がりである。
レーズンの甘みが良いアクセントになっていて、気づけばあっという間に食べ終えてしまった。

そこへ南高梅スカッシュが運ばれてくる。
和歌山といえばやはり梅である。
山道で乾いた喉に、この爽やかさは反則だった。

南高梅の酸味が心地よく、体に染み渡る。
梅好きの私にはたまらない一杯だった。

続いて焼きたてのピザ。

サイズは大きくない。
だが、チーズの濃厚さ、トマトソースの爽やかな酸味、エリンギの旨味。
必要なものだけで勝負しているような一品だった。

派手さはない。
だが完成度は高い。

最後に海の幸のトマトパスタ。
こちらは少し評価が分かれた。
ホタテが妻の好みではなかったらしい。

私も少し好みとは違ったが、エビは美味しかったので最終的には私がしっかり平らげた。

ごちそうさまでした。

さて、次は海へ向かう。
和歌山マリーナシティまでは車で約30分。

そう思って車を出そうとしたのだが、今度は出口が分からない。

前進してはバック。
バックしては前進。

何度か繰り返していると、見かねた店主さんが再びやってきた。
どうやら先ほどの坂を上がった先でUターンできるらしい。

できればもう少し早く教えてほしかった気もする。

それでも親切に対応していただいたことに感謝しながら、私たちは森のパン屋さんを後にした。
次なる目的地は、海沿いのテーマパーク。

和歌山マリーナシティである。

和歌山マリーナシティ|山を越えた先に待っていた海の楽園

最初は車一台がやっと通れるような山道だった。

左は崖、右も崖。

対向車が来ないことを祈りながら進むような道である。

しかし、そのうち道幅は広がり、二車線になった。
対向車を気にしなくていい。

それだけで心が軽くなる。

やがて人通りが増え、車も増えてきた。
ようやく山を下りてきたのだ。

そう実感するまでに10分ほどかかった。

私たちは和歌山マリーナシティへ向かっていた。

午前中は山。
午後は海。

なんとも欲張りな日帰り旅である。
しかし、それを無理なく実現できてしまうのが和歌山のすごいところだ。

山間の棚田や高原を楽しんだかと思えば、1時間も経たないうちに海辺のリゾートへやって来られる。
和歌山の懐の深さを感じる瞬間だった。

「駐車料金は先払いだってさ。」

駐車場へ入ると妻が教えてくれた。

和歌山マリーナシティは、さすが関西でも有名な観光スポットである。
家族連れはもちろん、外国人観光客の姿も多い。

敷地内には、

・ポルトヨーロッパ
・黒潮市場
・温泉施設
・お土産ショップ

などが集まっている。

ここだけで半日は過ごせそうな充実ぶりだった。

まずはポルトヨーロッパへ向かう。
異国情緒あふれる街並みが広がっている。

海風を受けながら少しずつ風合いを増した建物たちは、どこか本物の港町のような雰囲気を醸し出していた。

写真映えする場所も多い。
それでいて広すぎない。

大手テーマパークのように「全部見なければ」というプレッシャーもない。
のんびり歩きながら景色を楽しむ。

そんな過ごし方が似合う場所だった。
ゆる旅にはぴったりである。

続いて黒潮市場へ向かう。
お土産でも見ようか。

そんな軽い気持ちだった。
ところが中へ入ると様子が違う。

どうやらここは海鮮BBQを楽しむ施設らしい。
マグロの解体ショーも行われているという。

来場者はトレイとトングを持ち、それぞれ好きな海鮮を選んでいく。
最後にまとめて会計を済ませ、専用のBBQスペースで焼いて食べる。

なかなか楽しそうな仕組みである。

昼食を食べたばかりだったが、海の近くまで来ると不思議と魚が食べたくなる。

せっかくだ。

少しだけ寿司をいただくことにした。
妻は生魚が苦手なので、私だけである。

旨い。

脂がしっかり乗っていて甘い。
しかもネタが大きい。

思わず笑ってしまうほどの満足感だった。

岡山・倉敷旅行で訪れた「WASHU BLUE RESORT 風籠」の寿司を思い出す。
あの時と同じくらい感動した。

海辺の街の実力は伊達ではない。

食べ終わると、お土産売り場をのんびり見て回る。

店内にはBBQの香ばしい香りが漂っていた。
まだまだ食べられそうな気もしたが、次の予定がある。

名残惜しさを感じながら、私たちは次の目的地へ向かった。
最後に訪れるのは、和歌浦天満宮である。

紀州東照宮|和歌浦天満宮だと思っていたら違った話

私たちは和歌浦天満宮にやって来た。

……そう思っていた。

正確には違う。

ここは紀州東照宮である。

私は動画を編集するその日まで、

「きっと和歌浦天満宮の別名なのだろう」

と思い込んでいた。

とんでもない勘違いである。

なぜなら両者は近い場所にあり、雰囲気もよく似ている。

そのため私は、

「紀州東照宮=和歌浦天満宮」

という謎の公式を頭の中で完成させてしまっていたのだ。

さて、駐車場へ車を入れると気さくな職員さんが話しかけてきた。

「暑いなぁ。ここで駐車料金300円払ってもらったら拝観料が1人無料になるから。」

その瞬間、私たち夫婦が思ったことは同じだった。

(拝観料かかるんかい。)

なんとも庶民的な感想である。

しかし境内へ向かう途中、年季の入った石灯籠を見て考えが少し変わった。
こうした歴史的な建物や文化財を維持するにはお金がかかる。

むしろ神社やお寺は、もう少し拝観料を取ってもいいのではないか。

そんなことすら思えてきた。

どうせ参拝の時だけ、

「ご縁がありますように」

と言いながら5円玉を投げるのである。

なかなか勝手な話だ。

そんなことを考えていると、目の前に石階段が現れた。

侍坂。

108段あるらしい。

煩悩の数と同じである。

この階段を登り切れば和歌浦の絶景が待っているという。

さあ行こうじゃないか。
そう意気込んだものの、現実は甘くなかった。

ハアハア……

息が切れる。

煩悩まみれの庶民にはなかなか厳しい坂である。

「大丈夫か?」

妻に声をかける。

「うん、大丈夫。」

「あと少しや。頑張ろう。」

「うん。」

そんなやり取りをしながら階段を登る。

吊り橋効果という言葉があるが、もしかすると石段効果もあるのかもしれない。
少しだけ夫婦の絆が深まった気がした。

カップルや夫婦には案外おすすめの場所かもしれない。
ただし、小さな子ども連れには少々大変そうである。

ようやく登り切る。
しかし絶景を見る前に、まずは拝観料を納める。

大人一人300円。

ふと見ると、巫女さんらしき方が階段を登ってきた。
ものすごく息を切らしている。

「お互い運動不足なのかもしれませんね。」

などと勝手に親近感を抱いてしまった。

さて、いよいよ和歌浦の絶景である。

……のはずだった。

確かに景色はいい。
ただ、木々が成長したのだろうか。

少し視界が遮られていて、思っていたより見渡せない。
その点では和歌浦天満宮の方が景色は良かったのかもしれない。

とはいえ、ここには徳川家康公が祀られている。

かつて天下を治めた家康公も、この景色を眺めていたのだろうか。

そう考えると不思議なロマンを感じる。

そんな歴史ロマンに浸りながら、私たちの和歌山旅は終わりを迎えた。
大阪までは車で約1時間半。

帰り道では、

「楽しかったな。」

という結論を何度も違う言葉で言い換えながら走った。

山があり、海があり、絶景があり、美味しいものがある。
和歌山にはまだまだ魅力的な場所がたくさんある。

白浜もそうだし、今回行けなかった場所も数え切れない。

また機会があれば訪れたい。
そう思える、素敵な日帰り旅だった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました