倉敷美観地区観光記|予定外だらけの街歩きと阿智神社の癒し

ゆる旅プラン
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岡山駅から快速マリンライナーで約20分。
私たちは、この旅の宿がある児島駅へ向かっていた。
まさか、ここで今回最大の試練を迎えるとは思いもしなかった。

早めに児島駅へ着いた私たちは、構内のベンチにぐったり腰を下ろした。

「疲れたぁ。」

送迎バスが来るまであと20分近くある。
私たちは構内でゆっくりすることにした。

「塩とジーンズが有名らしいよ。」

構内にはPRポスターやご当地キャラクターなどが出迎えてくれていた。
塩ラーメンをぜひいただきたいが、時間の都合で味わえなかったのは残念である。
何かいいお土産を見つけられたらいいなと思いながら妻と話し込んでいた。

「すみません。WASHU BLUE RESORT 風籠の方ですか?」

「そうです。お待たせいたしました。あともう1組の方が車両トラブルで遅れてらっしゃいますので、バスの中でお待ちください。」
と、60代くらいの男性スタッフが答えた。

そう言うと、スタッフさんは私たちを駅前ロータリーへ案内した。
アーケードにはご当地ジーンズがたくさん吊るされていて、風でなびいている。

「すいません!お待たせして!」
と20分くらい遅れて40代後半くらいの夫婦がやってきた。

「いえいえ、どうぞ!」
と私も返す。

「お待たせいたしました。出発いたします。」

ガタッ

妻と顔をあわせる。

(なんか運転荒い?)
(だよね)

小声でヒソヒソ話す。
アクセルとブレーキがやや強めで、時々体が持っていかれる。

市街地を5分ほど走ると瀬戸内に向かう大きな道に出る。
強い登りにエンジン音が唸る。

ウオオオオン!!!

(だ、大丈夫かな?)
(だ、だ、大丈夫、のはず)

またヒソヒソと申し訳なさそうに話す。

そうこうしているうちに山道が終わる。

「瀬戸大橋だ!」

目の前に瀬戸大橋が姿を現した。
大橋を横切るように車は山の方に曲がる。

「お疲れ様でございました。到着でございます。」

やれやれといった具合に車外に出る。

WASHU BLUE RESORT 風籠 かさご。

今回のホテルである。

「こちらがお客様のお部屋でございます。ごゆっくりどうぞ。」

「ありがとうございました!」

そう伝えるとスタッフが部屋を後にする。
それを確認すると、私は思っていたことを口走ってしまう。

「うわっ、部屋のにおいがすごい!」

私はたまらず窓を全開にする。
妻も空気清浄機の電源をオンにする。

ブオオオオオオオオ!!!!

空気清浄機も大いに唸りを上げた。

「スパイス料理みたいなにおいがする!」
と妻も容赦のないことを言う。

「フロントに言おうよ!部屋変えてもらおう」
私はそう訴えたが、妻は、
「やめておこうよ。言ってもまた同じような部屋かもよ。」
と返す。

私は妙に納得してしまい、それでまた絶望するなら現実を受け止めようということになった。

「ウエルカムドリンクもらいにロビーに逃げよう!」
私は咄嗟に提案した。

いち早く、この部屋から出たかったのである。

ロビーのテラスと瀬戸内の風|救われた時間

部屋のにおいから逃げるように、私たちはロビーから続く広いテラスへ出た。
潮風が火照った体を冷ましてくれた。

「無料のおつまみなのに美味しいね。」

そう先ほどのことを忘れようとしていた。

私たちはお酒が飲めない。
その代わり、ロビーに置かれていた地元の柑橘ジュースを試してみることにした。

「さすが瀬戸内、美味しいね。」
目の前には瀬戸大橋。
「ここは最高だな。」

このあと私たちは今のことやこれからのことを存分に話し合った。
結果的には、あの部屋のおかげで二人のことをゆっくり話す時間ができた。

WASHU BLUE RESORT風籠の夕食バイキング体験|寿司とステーキは当たりだった

私たちは散々おつまみを平らげた挙句、バイキング会場へ向かった。

「こちらの席にどうぞ。」

「ありがとうございます。」

振り返ると、案の定そこに妻の姿はなかった。
鳥羽グランドホテルのときもそうだったが、彼女の初動はとにかく早い。
何が彼女をそうさせるのかは分からない。

会場にはグラスに入った前菜や小鉢料理が豪華に並ぶ。
どれにしようか迷う前に、もはや全制覇だと手当たり次第に取っていく。

カウンターでは握りたての瀬戸内の寿司や、焼きたてのステーキ、揚げたてのフグの天ぷらなどをその場で提供してくれる。
これぞ、戦に集中できるというものだ。

だが──

いくつか食べてみたが、正直あまりピンとこない。

「なんか俺の口には合わないんだけど、どう?」

「なんか微妙だね。」

妻の表情も少し曇る。

「でも寿司とステーキは美味しい!こればっかり食べるわ!」

寿司はネタが大きく、口の中でとろけていく。
ステーキも肉汁が溢れ、素直に幸せを感じる味だった。

なお、妻はそのどちらも食べられない。
分かち合えないのが少し残念だが、私はひたすら満足していた。

不満そうな妻を横目に、私は寿司とステーキへと集中していった。

朝風呂と瀬戸大橋|見えなかった絶景と小さなハプニング

翌朝、私はほとんど眠れなかった。
というより、夜中までロビーでChatGPTについて話し込んでいた。

ブログやYouTube運営のことを延々と語り合っていたのである。

そんな中でも、楽しみの時間がやってきた。
朝風呂である。

館内アナウンスでは5時30分から入浴可能とのことだったので、早めに向かってみた。

「おはようございます。」

すれ違う人に「おはようございます」と声をかける。

(あれ?もう入れるのか)

入浴開始前のはずなのに、すでに浴場は開いており、人の気配もあった。
あの館内アナウンスは何だったのだろうか。

露天風呂からは早朝の瀬戸大橋を一望できる──はずだった。

「よいしょおおおお!!!」

湯船に身を沈めた瞬間、瀬戸大橋は湯気と縁であっさりと見えなくなった。

(なんということか……)

少し落胆しながら風呂を出て、脱衣所へ向かう。

黒い下着に手を伸ばしたとき、妙な違和感があった。

(なんだか重い?)

よく見ると、手触りがいつもと違う。

(……いや、これは)

思い切って取り出した瞬間、気づいてしまった。

妻のキャミソールだった。

その時すべてを悟った。
どうやら私は、自分の下着と妻の衣類を取り違えていたらしい。

慌てて着替えを済ませる。

外に出ると、朝の風が心地よかった。

下着の件はなかったことにして、私は瀬戸内の風景に身を委ねた。
そういう朝も、悪くない。

朝食と旅の終わり|普通だった朝とこのホテルの記憶

朝食は、ビジネスホテルの朝食バイキングのようであった。
それ以上でも、それ以下でもない、そんな朝食だった。

相変わらず妻の初動は早い。
私も今度こそはと意気込んだが、思うようにはいかないものだ。

せっかく瀬戸内のホテルに来たのだからと、地元の食材を選ぼうとした。
しかし気づけば、無難なものばかりを手に取っていた。

結局このホテルは、テラスからの景色と、印象的だった夕食のバイキングが記憶に残る滞在となった。

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瀬戸大橋を見渡せる絶景を惜しみつつホテルを後にした。

児島駅から岡山駅まで20分。
平日の朝だけあって、乗客が次々と乗ってくる。

あっという間に満員電車になってしまった。
ちなみに妻は後ろの乗客にブツブツと何か文句を言われたらしい。

何を言っているかは分からなかったそうだが、妻の中で印象が悪かったようだ。

そんな愚痴を聞いているうちに、岡山駅で倉敷方面行きの電車がやってきた。
ここからさらに20分ほどガタンゴトンと揺られていく。

ディーゼルエンジンの音や振動が心地よく感じた。

倉敷に着くと、やはりここも掲示が親切で美観地区までのルートが分かりやすかった。
駅前のスタバでどこを巡るか、ルートの確認をする。

倉敷ならではの飲み物が欲しかったが仕方がない。

妻に岡山ラーメンを食べにいくのかと聞かれたが、私はインスタで見つけたお店に行きたいと伝え、店を後にする。

隠れ家的と言うより本当に隠れ家の食堂「常衛門食堂」である。
昼食50食限定で受付札を取ったもの勝ちらしい。

時刻は現在11:00。
勝算はある。

私たちは前日の疲れが残る体をひきづって美観地区の方向にある行き出した。
常衛門食堂は倉敷中央通りをまっすぐ進み、阿知町東部商店街に入ったところにある。

入り口が狭いので見つけるのが大変そうだと思っていると、それっぽい入り口を見つけた。
Googleマップで確認した瞬間、私は声を上げた。

「あ!定休日やん!」

愕然とする。
前日が日曜日だったので、私たちは無意識に営業しているものだと思い込んでいたのだ。

インスタで見つけたからとテンションを上げる前に、営業日や営業時間は確認したほうがいいかもしれないと思った。
今回の旅も実に学びが多い。

失意のまま美観地区の川にやってきた。
言うまでもなく有名な小舟のスポットである。

私たちはこのシーンが見られる食堂「カモ井」に入ることにした。
お寿司と冷たいお蕎麦のセットをいただくことにしたのである。
初夏とは言い難い、予想気温31度の岡山に相応しいメニューだ。

冷房の効いた涼しい店内で小川と小舟を眺める。
暑そうに歩く観光客を尻目に、優越感のあるひとときだった。

ーーただ、年配の方しかいなかったのが気がかりだが。

さらに私たちは、甘いものを求めて隣にある「くらしき桃子」というスイーツショップにやってきた。
白桃のソフトクリームを食べてみたかったからだ。

残念ながら妻は白桃も苦手である。
私は申し訳なさそうに食べたが、心の中ではラッキーと思っていた。

外に食べるところがあると伝えると炎天下の中、食べることになった。

ーー暑い。

すると他の観光客が、

「中に入ろうよ。食べるところあるよ。」

と、その家族と話し合っているではないか。

私は、「?」という気持ちになった。
店内は狭く、そんなイートインスペースが見当たらなかったからだ。

食べ終わった私たちは店内を確認しにいく。
すると、カウンターとは反対側に自動ドアがあった。

私たちは不注意で肝心な休憩スポットを見逃してしまったのである。

「中でいちじくのパフェ食べたかった。」

そう、漏らす妻に本当に申し訳ない心境になってしまった。

だが、ここからは妻の希望していた観龍寺と阿智神社に参る。
倉敷の穴場スポットのように、観光客はほとんどいなかった。

それもそのはずである。
本通り商店街の先端からお寺に向かって急な階段が待ち構えているからである。

ーーこれ登るのか。足痛いな。

と心の中で思ったが、先ほどの妻の残念そうな声を思い出して心を奮い立たせる。
ここで頑張らなければどこで頑張るのかと。

「よし!登ろう!」

そう妻を励ますと、ゆっくりと登り始めた。

途中で息が上がってくるが、足が上がらなくなってくる。

あと少し。

ハアハア、やっと登った。
そう思って振り返ると、美観地区が一望できたのである。

長めの良さに妻も上機嫌である。
あとは御朱印がもらえれば、妻の機嫌もさらに良くなるだろう。

ところがよくあるような受付所が見当たらない。

参拝を済ませて、入り口に戻る最中、観光客が民家に吸い込まれていく。
私たちは怪しい者ですと言わんばかりの雰囲気で後をついていく。

「あの、御朱印はこちらですか?」

「はい、お掛けになってお待ちください。」

ホッと胸を撫で下ろし、広い玄関に置かれたベンチに腰掛ける。
玄関は入り口から涼しい風が流れ込み、火照った体を冷ましてくれる。

瀬戸内の風は実に心地よい。

「どうぞっ!」

お寺の子供さん、5歳くらいだろうか。
御朱印帳を差し出してくれた。

「ありがとう!」

妻も笑顔で応える。

「ありがとうございました。お邪魔致しました。」

そうお礼を伝えて、お寺を後にした。

観龍寺を出るとさらに上がることができる。
本日のメインターゲットである阿智神社に向かう。

5月には神社の藤棚が咲き誇るという。
それはぜひ見ておきたいと思い、やってきたのだ。

神社に向かう階段。
誰もいない。

美観地区の賑わいとは対照的に、そこだけ別世界のように静かだった。
一面、緑に覆われている。

緑を抜けると手水舎やが見えてきた。
しかし、遠くからでもわかる。

実にカラフルであることに。

近づいてみると手水舎がお花で飾られていた。
実に美しい。
他の観光客も近づいては感嘆の声を漏らしていた。

「綺麗だね。」

と手を洗いながら妻に言う。

「君の方がもっと綺麗やけどな。」

と続けると、妻は顔を赤くして喜ぶ。

ーー「私は、何を言っているのだ。」と思ったが言わないことにした。

さらに階段を登って参拝を済ませる。
今度は御朱印の受付場所があり、しかも冷暖房完備である。

涼しいと言いながら御朱印が出来上がるのを待っていた。

「どうぞ。」

嬉しそうに御朱印帳を受け取る妻。
外で見てみようと提案する。

境内には倉敷を一望できるこじんまりとしたテラスがあった。
観光客はそこに吸い寄せられる。

冷たい飲み物をとりながら妻は御朱印帳を広げる。
実に上機嫌のようだ。

「藤棚を見に行こう!」

旅の最後を締めくくるにふさわしい舞台へ意気揚々と向かったーーが。

「シーズンオフ…みたいやな……」

藤棚はすでに緑に覆われていた。
少し時期が遅かったようである。
次に来るときは、開花の時期をしっかり調べて来たいと思った。

残念そうな妻であったが、御朱印パワーで乗り切ってた。

しかし、私たちの足はすでに限界を迎えていた。
大通りでタクシーを拾って倉敷駅まで行こうと言うことになったのである。
無論、バスも考えたが運行時間が合わずにタクシーという選択肢を選んだ。

今回の岡山は完璧な旅ではなかった。
だが、だからこそ記憶に残る旅だったのかもしれない。

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